切迫早産の原因の一つに
「絨毛膜羊膜炎」という病気があります。
妊娠32週以前の早産の原因にも
なる病気です。
今回はこの「絨毛膜羊膜炎」について
詳しく見ていこうと思います。
目次
絨毛膜羊膜炎とは
その名の通り、
「絨毛膜」という膜と
「羊膜」という膜に
「炎症」が起こる病気です。
「絨毛膜・羊膜」というのは、
赤ちゃんと羊水を包んでいる
膜のことです。
その膜に細菌が感染し、
炎症を起こします。
なぜ絨毛膜羊膜に細菌が感染するの?
妊婦でない時から、細菌は常に膣内にいます。
このように常にいる菌のことを「常在菌」
といいいます。
通常、膣内は乳酸菌が多くおり、
酸性に保たれおり、他の細菌が増えるのを
防いでいます。
しかし、膣内の細菌のバランスが崩れ、
膣内が酸性でなくなると、
普段は増えてこない細菌が増殖し、
「細菌性膣炎」となります。
そして、その炎症が広がり、
子宮頚管にも感染することがあります。
さらに妊娠中だと、そこから絨毛膜羊膜へ
細菌感染が広がっていくことがあります。
このように細菌感染が広がった状態を
「絨毛膜羊膜炎」といいます。
その他の感染経路としては、
歯周病やけがなどから細菌が血液内に入り
そこから感染が広がる場合や、
羊水検査(羊水穿刺)によって
細菌感染を起こす場合などが
あると言われています。
早産の原因のNo.1
絨毛膜羊膜炎は早産の原因のナンバー1です。
絨毛膜羊膜炎になると、
・子宮頚管が柔らかくなってしまう
(固く閉じていなければいけない)
・絨毛膜や羊膜が弱くなり、破水してしまう
・子宮が強く収縮し、陣痛になってしまう
などの状態になり、早産するリスクが高くなります。
妊婦さんに症状が出た場合は、
ほとんどの場合で、数日中に
出産となり、早産になると言われています。
絨毛膜羊膜炎は、32週未満の早い週数の
早産に多く見られます。
絨毛膜羊膜炎の種類
絨毛膜羊膜炎には
「不顕性(ふけんせい)」
「顕性(けんせい)」
の2種類があります。
「顕性」とは妊婦さんに症状が出ること。
「不顕性」とは妊婦さんに症状が出ていないこと。
をいいます。
つまり「顕性」というのは
感染が広がり、妊婦さんにまで
症状が出ている状態になります。
「不顕性」の状態が悪化すると
「顕性」に進んでいきます。
「顕性」なのか「不顕性」なのかで
その後の経過が大きく異なります。
「不顕性」の場合、早く治療を行えば、
早産に至らず、そのまま妊娠を継続できます。
しかし、「顕性」になってから
治療を開始しても、妊娠を継続することは
難しく、出産になり、早産になることが多いです。
「不顕性」の段階で絨毛膜羊膜炎を発見し、
早く治療を開始することが大切になります。
不顕性の絨毛膜羊膜炎の症状と診断方法
先ほどから説明していますが、
「不顕性」の絨毛膜羊膜炎の場合は、
妊婦さんの自覚症状はありせん。
ですので妊婦さん自身が見つけることは
困難です。
「不顕性」の絨毛膜羊膜炎を見つけるには、
妊婦健診が大切になります。
妊婦健診で、
・膣の炎症
・子宮頚管の短縮
などが認められた場合は、
「絨毛膜羊膜炎」を疑い、膣や子宮頚管の
検査を行います。
具体的には、おりものをとってきて、
細菌数などを調べます。
膣の中には沢山の乳酸菌がいるはずですが、
その乳酸菌の数が減り、
別の細菌や、細菌感染が起きた時に増える酵素
(顆粒球エステラーゼといいます)が
増えている場合には、
「不顕性の絨毛膜羊膜炎」と診断し、
治療を開始します。
顕性の絨毛膜羊膜炎の症状と診断方法
「顕性」の絨毛膜羊膜炎の場合は、
感染が広がっているので、
妊婦さんにも症状が出ています。
具体的な症状としては、
・おりものの悪臭
・38℃以上の発熱
・動悸(1分間に100回以上脈を打つようになる)
・お腹の痛み(ぐうぅぅっと押されるような痛み)
などが認められます。
妊婦さんの症状に加え、
膣の状態や、血液検査での
白血球数の上昇などを加味し、
顕性の絨毛膜羊膜炎の診断をします。
絨毛膜羊膜炎の治療方法
不顕性の絨毛膜羊膜炎の場合
感染が初期で、まだ妊婦さん自身に症状が
出ていないため、治療を行い、
進行を止めることを最優先します。
進行を止めることができ、
絨毛膜羊膜炎を治療できれば、
妊娠を継続し、予定通りに出産することも
可能です。
まずはこれ以上感染が広がらないように、
抗生剤(細菌を殺す薬)を投与します。
さらに、早産予防のため、
子宮収縮を抑制する薬や
お腹の赤ちゃんの肺の成熟を促す
副腎ステロイドの注射を打ったりもします。
不顕性→顕性に進行していないかを確認するため、
定期的な体温測定や
血液検査なども行われます。
絨毛膜羊膜炎は、完治したかどうかが
はっきりとはわかりません。
ですので、繰り返さないように
慎重に経過をみながら出産まで
過ごすことになります。
顕性の絨毛膜羊膜炎の場合
多くの場合、感染が広がり
子宮内にも感染が起こっています。
治療を行っても進行を止めることは
困難になっていることが多く、
多くの方が
・前期破水
・早期陣痛
・頸管の熟化(子宮頚管がやわらかくなること)
となり、早産になります。
妊娠26週未満で、胎児が未熟な場合には、
できる限り妊娠を継続するように治療が
行われる場合もありますが、
進行を食い止めるのは難しいことが多いです。
また、顕性の絨毛膜羊膜炎の場合は、
胎児感染を引き起こしている場合もあり、
妊娠を継続することが、胎児にとって
いいことかどうかの判断は難しいです。
出産となった場合の方法は、
その時の妊娠の週数により、
薬などで陣痛を起こし、自然分娩する場合もあれば、
帝王切開になる場合もあります。
感染の状況
母体の状況
胎児の状況
の全ても考え、その時々で判断されます。
絨毛膜羊膜炎の胎児への影響は?
不顕性の絨毛膜羊膜炎の場合
不顕性の場合は、感染が広がっておらず、
胎児まで感染していることはほとんどありません。
ですので、治療を行い、
進行を食い止めることができれば、
赤ちゃんに大きな影響を与えることは
ありません。
早産にならずに、
生産期にしゅっさんできれば、
絨毛膜羊膜炎がなかった
普通の赤ちゃんと同じですので、
何も気にする必要はありません。
顕性の絨毛膜羊膜炎の場合
顕性の絨毛膜羊膜炎の場合は、
子宮内感染を起こしており、
早産になる可能性が極めて高いです。
また、感染が広がっており、
子宮内に感染が及んでいるということは、
胎児自身に細菌感染が起こっている
可能性あります。
さらに、感染が胎児自身に及んでいないとしても
子宮内で感染がおきたことで
その影響を受け、胎児の臓器がダメージを受ける
こともあります。
顕性の絨毛膜羊膜炎から早産になった場合
呼吸窮迫症候群のリスクが3倍
周産期死亡率が4倍
脳性まひとなるリスクも高まります。
※日本産婦人科学会参照
また早産になった場合は、
妊娠週数により
低出生体重児(2500g未満)
極低出生体重児(2000g未満)
超低出生体重児(1500g未満)
になることもあります。
その場合は、絨毛膜羊膜炎の影響+
早産することによる様々なリスクが
伴ってきます。
もし、顕性の絨毛膜羊膜炎になり、
早産することになった場合は、
主治医や小児科医の医師から
色々な説明を受けると思います。
急なことで、パニックになっていて、
なかなか話を理解できないことも
あるかもしれませんが、
これから先の大切なことを説明している
ことが多いので、できるだけ理解するように
努力しましょう。
自分より冷静な方(ご主人や家族)に
立ち会ってもらうのもいいと思います。
絨毛膜羊膜炎の予防方法は?
しかし、膣内の細菌バランスを崩さない事が
大切ですので、
・性交渉を行う場合はコンドームを使う
・膣内や陰部を洗いすぎない
ということが大切になります。
石鹸を使って高頻度で陰部を洗ったり、
ウォシュレットを頻回に使うことで、
膣内を酸性に保ってくれている乳酸菌が
減り、膣内のバランスが崩れる事もあります。
清潔にすることはもちろん大切ですが、
やり過ぎないようにしましょう
まとめ
今回は絨毛膜羊膜炎についてみてきました。
とにかく大切なことは
「顕性」の絨毛膜羊膜炎になる前に
早期発見して、早期に治療をすることです。
そのために大切なことは、
きちんと妊婦健診を受ける事と
陰部をきれいに保ちながら
洗い過ぎは控える事です。
顕性の絨毛膜羊膜炎は診断を受けた時点で、
進行を抑えることは困難なため、
その前に見つけたいものです。
長文を読んでいただいて
ありがとうございました。