女医ブログをお読みいただき
ありがとうございます。
切迫早産で入院になった場合、
いつ退院できるのか気になりますよね。
長期入院になることも多いと思います。
今回はどのようにして退院が決まるのか
をみていきたいと思います。
胎児の要因
胎児が順調に発育していて、
サイズも問題なければ、
胎児の要因で入院期間が
左右されることはありません。
最も早い病院で32週、
最も遅い病院で37週に
退院になると思います。
(こちらについては、
病院の要因でみていきます。)
胎児の要因で入院が長引く、
もしくは、退院できない時は
- 骨盤位(逆子)
- 多胎妊娠(双子や三つ子以上の妊娠)
- 赤ちゃんが順調に発育できていない(IUGR)
- 何かしらの問題がすでに見つかっている など
が挙げられます。
骨盤位(逆子)や多胎(双子や三つ子)
の妊娠の場合は、帝王切開になることが
多いです。帝王切開の場合は、基本的に
手術の日まで入院になります。
ですので、退院は出産後ということになります。
赤ちゃんにトラブルがある場合は、
その内容にもよりますが、
ぎりぎりまで入院して
様子をみることが多いです。
また帝王切開になることもありますので、
そうなると退院は出産後ということになります。
母親(妊婦)の要因
今度はお母さん側の要因です。
入院が長引く要因としては、
- 今回の妊娠の経過はどうか
- 前置胎盤(胎盤が出口を塞いでいる)
- 羊水過多・羊水過少などの異常がある
- 糖尿病や高血圧・甲状腺機能異常などの
他疾患を合併している - 前の子が帝王切開で生まれている
- 上の子が早産
- 上の子が薬を抜いてすぐに生まれている
- 自宅で安静にできる環境が整っていない など
まず、今回の妊娠の経過についてです。
例えば、
Aさん
妊娠20週で、子宮頚管が緩く、
柔らかくなっていて、
シロッカー手術(子宮頚管を結ぶ手術)
をおこない、23週の時に一旦退院。
しかし、結局、子宮頚管が柔らかくなり、
開いてきており、子宮頚管長も
短くなっているため妊娠26週で再入院。
その後張りも強く、頻度も多いため、
ウテメリン・マグセントの点滴を共に
最大量まで投与している。現在妊娠35週。
Bさん
妊娠32週で子宮頚管長が15㎜だったため、入院。
子宮頚管は固く、開いていない。
念のため、ウテメリンの点滴を最低量で
投与しているが、強い張りがあるのは
日に数回程度。現在妊娠35週。
AさんとBさん、両方とも
「入院が辛いので退院したい」と言っています。
どちらなら退院できそうでしょう?
Aさんは、まず無理でしょう。
Bさんは、内服に切り替えてみて、
お腹の張りが変わらなければ
退院できるかもしれませんね。
入院の経過って一人一人違います。
そしてその経過が、本当に大切なんです。
なので、同じ薬を同じ量使っていたとしても、
いつ退院できるのかは、人により異なります。
ちなみにAさんは次男の妊娠時の私です。
(私は35週で退院したいとは言っていませんが。)
結局、妊娠36週6日の日に点滴を抜きました。
が、その日の内に出産になり、
次男も早産児(ほんの少しですが)です。
ちなみに長男は36週5日で出産しています。
胎児側の要因と一緒ですが、
帝王切開になる場合
(前の子が帝王切開、前置胎盤など)は
退院は出産後になります。
また他疾患を合併していて、
その治療も必要な場合はなかなか退院できません。
その他として、
「上の子がどのようにして生まれたか」
ということも大切な要因になります。
上の子が早産の場合は、
次の子が早産になることが多いので、
退院に慎重になります。
さらに上の子がいるということは、
自宅で安静にできないことが多いので、
これも退院を遅らせる要因になります。
次に退院を早める要因について
母親が精神的に追い詰められていて、
入院生活を続けるストレスがあまりに大きく、
母親・胎児によくないと思われる場合。
切迫早産での入院は本当にきついです。
長期間に及べば及ぶほどきつい!
精神的に追い詰められ、
泣き叫んでる人もいないことはないです・・・。
ただし、退院は当然出産してしまう
リスクを伴うので、病院によっては
「自己判断による退院である」
という書面に一筆書かないと
退院できなかったり、
34週くらいまではまず許可はおりません。
しかし、「どうしても」という時は
退院になる時はあります。
ちなみに、上の子の入園式とか、
お正月とかは基本考慮されません。
私も上の子の入園式は諦めました。
病院の要因
病院により、色々な点で異なってきます。
・NICUがある総合病院であるか。
クリニックなどで入院されている場合は、
36週(少なくとも35週)まで
基本的に入院になると思います。
それは、退院した後、早産で
出産となったときに、赤ちゃんを
助けられる設備・医師体制が
整っていないため、
早く退院させられないからです。
(何にしても赤ちゃんは36週以降に
産んだ方がいいことは間違いありません。)
・病院の方針
36週で退院させる、と決まっていたり、
逆にできるだけ37週まで入院させる
と決まっていたりします。
(明記されているわけではなく、
その病院の文化みたいなものです。)
・最近は32週、34週で退院許可が出る病院も。
なぜ早く退院させる病院が出てきたのか
欧米では、そもそも切迫早産で
長期入院するということはありません。
その理由は
①ウテメリンの点滴の長期投与が
早産を防ぐというきちんとしたデータがない。
②そもそも海外ではウテメリンの投与期間を
48時間以内としているため、長期投与に
効果があるのかどうかの検証ができない。
③入院費がめちゃくちゃ高額なので、
そもそも長期入院なんてできない。
④国民皆保険や高額医療制度などの
国の助けが整っておらず、金銭面で難しい。
さらに欧米では、32週以降も入院を
継続することに意味があるのか、
という話もあります
その理由は
①新生児医療が充実してきて
助けられるようになってきたこと
(32週以降の出産で、体の障害が
残る確率はかなり低くなっています。)
②ウテメリンやマグセントが赤ちゃんに
少なからず影響を与える可能性はある。
③お母さんのストレス、負担も大きいこと
④経済面での負担が大きいこと
最近では欧米でのその流れを受けて、
早期退院を行っている病院があります。
しかし、日本の場合は、まだまだ長期入院、
妊娠36週ー37週まで入院が多いと思います。
主治医の要因
この要因は結構大きいです。
なぜなら、退院許可をくれるのは
主治医だからです。
他の先生が退院してもいいんじゃないか、
と言っていても、主治医が
首を縦に振らない限りは退院できません。
そして、医師により、慎重な先生と大らかな先生がいます。
慎重な先生なのか大らかな先生なのか
これは、今までの医師の経験などにも
よりますし、元々の性格もあります。
医師が自分が担当した妊婦さんが早産となり、
「あの時自分が妊婦さんを
退院しないように説得するべきだった。」
という気持ちを持ったことのある医師は、
慎重派に傾いていきます。
(こういう経験のない産婦人科医は
いないと思いますが・・・。)
慎重派かどうかどうやったらわかるの?
という疑問に対しての答えは簡単です。
看護婦さん、助産師さんに聞いてみて下さい。
「あー、○○先生かぁ。
うーーーん、なかなか帰れないかもね。」とか
「あー、〇〇先生なら、一回話してみたら?」とか
リアクションしてくれます。
助産師さんだと
「○○さんの場合は、どちらにしても
37週まで退院は難しいと思いますよ」
とか教えてくれることもあります。
ポイントはベテランの方に聞くことです。
明らかに若い看護師さん・助産師さんだと、
あまり知らないこともあります。
私が次男で入院した時は、
若い女性の先生が主治医でした。
結構大らかな先生でしたが、
その先生と一緒に担当してくれていた先生が、
部長の先生だったのですが、
その先生がめちゃくちゃ慎重な方だったので、
「36週6日まで点滴を継続しよう」
という方針になりました。
結局点滴を抜いたその日に出産になりました。
(つまりほんの少し早産です。)
私の同室だった人は、その後
「37週0日まで点滴してよう」
と医師に言われたと言っていました。
こんな風な経験の積み重ねが
医師としてのスタイルを
作っていくことになります。
しかし、退院日・入院期間を決める要因は
多岐に渡ります。
ですので、自分の気持ちも含め主治医
ときちんと相談し、決めていくことが大切になります。
まとめ
今回は、どのように退院・入院期間が
決まるのかということで
赤ちゃん(胎児)の要因、
お母さんの要因については、
赤ちゃん、お母さんの状態は
一人一人違います。ですので、
他の人が参考にならないことも多いです。
自分の今の状況でどうするのが良いかを
主治医とよく相談して下さい。
病院の要因、主治医の要因 については
自分ではどうすることもできないことが
多いですが、自分の気持ちや意見を
きちんと主治医に伝え、自分の状況を考慮して、
退院日を相談していくことが大切です。
女医ブログを読んでいただいて
ありがとうございました。
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