女医ブログをお読みいただき
ありがとうございます。
今回は、マグセントを投与した時に
定期的に行われる採血がなぜ行われるのか、
そして、マグネシウムの血中濃度が
どのくらいだといいのか
についてみていきたいと思います。
目次
どんな時にマグセントを使うの?
切迫早産で入院すると、
点滴で治療を行う方がほとんどです。
点滴は主にウテメリンが使われ、
マグセントは2番目の選択になります。
マグセントの点滴が使われるのは、
ウテメリンを最大量にしても、
お腹の張りが抑えられない時。
もしくは
ウテメリンで副作用が出てしまい、
ウテメリンが使えないので、
マグセントを使う時。
この2パターンが多いです。
また妊娠糖尿病の方は、ウテメリンですと
糖尿病が悪化してしまうので、
マグセントを使用される時もあります。
マグネシウムを定期的に採血するのはなぜ?
マグセントを使用し始めると、
1週間に1回以上の割合で、血液検査を行います。
マグネシウムの血の中の濃度を測ります。
それはなぜなのでしょうか?
マグネシウムは、常に体の中にある
微量元素と言われるものです。
マグネシウムが不足すると様々な病気になりますので、
絶対に必要なものです。
マグネシウムの正常の血中濃度は
1.8~2.4㎎/dl
基本的に、全ての人がこの中に納まっています。
切迫早産でマグセントを投与するということは、
マグネシウムの血の中の濃度を高くすることで、
子宮の収縮(お腹の張り)を抑えるためです。
しかし、マグネシウムの血の中の濃度を高くすることで、
様々な悪いことも出てきます。
血の中の濃度が上がり過ぎると、
最悪、意識が無くなったり、死ぬこともあります。
ですので、そうならないように、
定期的にマグネシウムの血の中の濃度を測り、
大丈夫かどうかをみていくことになります。
マグネシウムの濃度はどのくらいがいいの?
マグセントで治療が行われる時、
マグネシウムの血の中の濃度が
4~8㎎/dl
だと治療としてはちょうどよいと言われています。
副作用のでかたは個人差があり、
血中濃度が4でも激烈な副作用が出る人もいれば
血中濃度が7くらいでも意外と平然としている人もいます。
ただ言えることは、
マグセントの投与を始めて数日や
量が増えて数日は、
倦怠感などの副作用は強くでます。
その後は慣れてくるのか、
自覚症状としては、少しずつましになってきます。
マグネシウムの濃度と症状の関係
マグネシウムの血の中の濃度が高くなる状態を
高マグネシウム血症と言います。
マグセントを投与すると、当然、高マグネシウム血症になります。
高マグネシウム血症の時の症状は以下の表の通りです。
「Mg」というのはマグネシウムのことです。
出典:http://di.funa3.info/hypermagnesemia
血中濃度 4.9㎎/gl~ の所に「筋力低下」とあります。
マグセントは、全身の筋力を低下させ、お腹の張り(子宮の収縮)を抑えます。
つまり、この「筋力低下」を狙って、マグセントを投与しています。
その他に書いてある症状は、妊婦さんにとっては
「副作用」として感じられるものです。
「ECG異常」というのは、心電図をとった時に異常がでるということです。
難しい単語が多いと思いますが、
血中濃度 9.7㎎/dlを超えてくるとまずいです。
簡単に説明すると
「随意筋麻痺」:筋肉が思うように動かない
「嚥下障害」:ものがうまく飲み込めない
「房室ブロック」:心臓が正しく動かない
ということです。
ですので、マグセントの治療血中濃度は
8㎎/dl以下になっています。
マグセント投与中に気を付けることは?
マグセント投与中はしっかり水分補給を!!
マグセントは腎臓から つまり尿から排泄されます。
しんどくて、水分をとらずに尿の量が減ると
血の中のマグネシウム濃度がぐっと上がってしまうため危険です。
口渇の副作用があるため、
いつもより水分を沢山飲む方が多いですが、
できるだけ沢山飲んで、しっかりトイレに行って下さい。
トイレに行く時には転倒注意です!
筋力が落ちていて、お腹は大きくて、足が脱力しているので
とっても危険です。
地面に座ってしまうと立ち上がるのもやっとです。
ご注意下さい。
まとめ
今回は、マグセント投与中の
マグネシウム血の中の濃度と症状の関係をまとめました。
マニアックな内容が多かったと思います。
マグセントがどのような薬で、
血の中の濃度がどのぐらいだとよくて、
濃度が上がってくると、
どんな症状がでてくるのか、
分かって頂けたでしょうか。
マグセントを投与すると、
副作用はもちろんですが、
一定の危険を伴います。
(それで死んだりすることは
まずないとですが・・・。)
自分の体を顧みず、赤ちゃんのために
頑張れるお母さん!本当にすごいです。
私もマグセントを投与していたので、
辛さは身に染みてわかっています。
切迫早産の治療は、いずれかならず終わりがきます。
1日1日を坦々と過ごして下さい。
お腹の赤ちゃんもきっと感謝しています。
本当に本当にお疲れ様です。